イベントレポート
EVENT REPORTS
東京慈恵会医科大学 学長講演会
「医師を目指す全ての受験生に!医学部での学びとその先にある医学・医療」
講演会2023年10月
2023年10月1日、東京慈恵会医科大学 松藤千弥学長による学長講演会が東京新宿会場にて開催されました。
最新の医学教育の動向や学びのスケジュール、さらには医学部進学者へのメッセージなど、
指導者ならではの貴重なお話しを、ここで改めてご紹介します。
実施内容
医師として何を学び、どんなキャリアをたどるのか。
医学を学ぶこと、そこにはさまざまな側面があるということを知って欲しいと思います。何よりやりがいがある、人を助けられる、感謝されるなどがその代表例です。一方、学ぶ内容が多く、倫理観や人間性も求められ、どれだけ自分の力を高めても物足りなさを感じるという事実も、医学を追究する上で知っておくべきだと考えます。
大学での学びを終えた後は、病院などに所属する勤務医や開業医など、大半が医師としてキャリアを積みます。その他では医学研究者、行政、ビジネス、国際貢献活動などに関わるという例も見られます。
最近の医学教育の動向について。
最近は、どの大学の医学部でも一定レベルの教育が受けられるように医学教育が標準化されつつあります。具体的には、各医学部がカリキュラムの2/3程度を「医学教育モデル・コア・カリキュラム」に沿って教育します。現在の医学教育では、従来のように「専門知識をひたすら学ぶ」のではなく、「さまざまな課題を、見つけて、解決する力を育む」ことがコンセプトとなっています。
「共用試験」の法制化も、重要な事項です。この試験は臨床実習を行うために必要な能力を評価するもので、合格しないと臨床実習において医行為ができないばかりか、医師国家試験が受験できなくなります。
また、現在ではすべての医学部が「アウトカム基盤型学習」を導入しています。この教育システムでは、卒業時に求められる資質・能力を明示し、その修得のためにカリキュラムを設定し、その履修ができる入学生を選抜します。これらは「3つのポリシー」として各医学部が公開しているので、目標とする大学のものは必ずチェックしておくべきでしょう。
医学・医療の専門化、細分化が進んでいますが、医学教育ではまず「総合診療能力」をしっかり身に付けることが求められます。単に病気を治すだけでなく、患者さんが抱える諸問題にも目を向ける姿勢が大切なのです。
どのように学びが進んでいくのか。
医学部で学ぶ6年間のカリキュラムは、教養・準備教育、基礎医学、医学研究、臨床医学、臨床実習などで構成されています。最近では、自分の考えを発表したり、課題についてディスカッションしたりするアクティブラーニング、授業の前に自分で学んだことを授業でアウトプットする反転授業などが次第に取り入れられるようになり、知識にとどまらない医師としての総合的な能力が育まれます。
また、臨床実習を最低でも1年、場合によっては2年以上かけて行う医学部が増えています。医学部卒業後は、医師国家試験に続いて、2年間の初期研修、専門医となるための専門修得プログラムを3年以上かけて学ぶ後期研修が用意されています。
医学部進学に向けてのアドバイス。
大学が求めているのは、まず大学を卒業できる人、そして医師国家試験に合格できる人です。志望理由が「自分の意志でなく、家族などに進められた」、「成績がいいから」、「生活が安定するから」などの場合、それなりに大変な医学部の学習をやりきることができず、せっかく入学してもドロップアウトするケースが見られるので、進路選びには慎重になってほしいと思います。
大学が次に求めるのは、大学の理念の担い手になってくれる人です。例えば地域医療に重点を置いている大学を受験するなら、その理念を意識して面接や小論文などに取り組むと良いでしょう。
最後に私からのメッセージです。これから求められるのは、少子高齢化社会、医療費の膨張など、医療が関わる社会問題も自ら解決できる人です。また、他人を幸せにすることで自分が幸せになる。そういう人は、ぜひ医学部へ来てほしいと願っています。
参加者の声を紹介します!
社会が変化する中で、医学教育がどのように変化しているのかを知ることができ、大変参考になりました。(生徒)
松藤学長が医学部を志す生徒に望む特性、入学後の医学勉強の天望等について明瞭に指針を示していたことは、東京慈恵会医科大学を目指す生徒にとって大変意義深かったです。(保護者)
医学部全体としての現状や、今後の流れなども知ることができました。(生徒)