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医学部推薦入試分析会~東京医科大学・東京女子医科大学~

●VOL.19 東日本エリアマネージャー/東京お茶の水校舎長 佐分篤史

推薦入試のほうが倍率の高い大学

 
中にはこういった大学もあります。近畿大学は推薦入試と一般入試の倍率が変わりません。また、藤田保健衛生大学の推薦入試の倍率は14.4倍で、一般入試が9.2倍と、推薦のほうが倍率が高いという大学もあります。どうしてこのようなことが起こるのか? 2015年の公募制推薦の一覧を見てみましょう。注目していただきたいのは、合格者の偏差値ではなくて、倍率です。
 
近畿大学や藤田保健衛生大学の推薦の倍率が高いのは、受験資格の差があるからです。先ほどお話した、東京医科大学や東京女子医科大学の推薦入試を受験できる資格を持った方というのは、現役生だけです。片や、近畿大学や藤田保健衛生大学は一浪生まで受験できます。その分、受験する方が増えている。
 
それともうひとつ、「評定平均」というものがあります。これは高校の通知表の点数を5段階評価で算出するものですが、他の大学には「評定平均が4.1以上じゃないとダメですよ」といった縛りがあるところを、近畿大学と藤田保健衛生大学には縛りがありません。だから、「評定平均が3.8で一浪です」という場合も受験できるわけですね。
近畿大学にはもうひとつ特徴があるんですが、推薦入試であるにもかかわらず、併願することができます。なので、近畿大学の推薦入試に合格していても、他の大学を選択して辞退することができる。中高一貫校に通学している現役生で、入試から離れてしまっている方などで、受験の練習として近畿大学の推薦入試を受けるケースもあります。一方、藤田保健衛生大学は専願ですので、合格したら入学手続きをすることが条件です。そこで、特に行きたい大学がある方は懸念するということもありますが、一浪まで受験出来て、評定平均の縛りもないということで、早く大学を決めてしまいたい人が多く受験するということが考えられます。 
 

推薦入試を勧める理由2「学力レベルが同じ受験者と勝負ができる」
偏差値の分布図を見てください。この分布図はベネッセと駿台が共催で実施している秋の記述模試の結果を元に作成してあります。この模試で当時これくらいの偏差値を取っていた方が、最終的に何名合格して何名不合格だったのかを示しています。例えば、東京医科大学を見ると、偏差値74を取っていた方は10名合格して、23名不合格でしたということがわかります。 
 
東京医科大学と東京女子医科大学を比較して見ていただきたいんですが、注目すべきは、この合格者の分布図と平均偏差値です。まず、東京医科大学の合格者の平均偏差値は70.4です。東京女子医科大学の平均偏差値は71.7です。若干、河合塾の模試よりも偏差値が高めに出るので注意してください。だいたい5くらい違うのかなというイメージです。

まず、東京医科大学の推薦入試合格者の平均偏差値を見てください。56.9。先ほど、一般入試の合格者の偏差値は70くらいありました。けれども推薦入試の合格者数の平均偏差値というのは56.9です。ただ、東京医科大学では注意してもらいたいことがあります。それは、看護学科を受けている方も「医学部看護学科」となっているために、合格者の平均偏差値に含まれているということです。52未満の方はほとんど看護学科なので、ここに偏差値が引っ張られていて、こういった値になります。実際はもう少し高く、60ぐらいだと推測されます。どうですか? 一般入試と比べると10、偏差値が違うんですよ。
 
次に、東京女子医科大学を見てみましょう。東京女子医科大学も61.0です。一般入試ではだいたい71でしたよね。なので、この大学も一般入試に比べるとだいたい10、偏差値が低くなっているということが言えます。
 
これはどういうことかというと、模擬試験を受けたときに、現役生より浪人生のほうが一年間多く勉強しているので、やはり成績が良い…もっと言えば、二浪生や三浪生といった方も模試を受けていますよね。ですが、推薦入試は現役生しか受けられないので、同じようなレベルの人と勝負をすることができるということです。
 
1年多く勉強しています、2年多く勉強していますという方に比べると、やっぱり現役生は圧倒的に不利ですよね。学校もあるし、高校の授業進度が遅い、ということもあって時間的な不利がある。しかし、推薦入試を受けていただくと、同じような状況に置かれている、同じようなレベルにいる方と勝負をすることができる。そこはポイントだと思います。 

推薦入試を勧める理由3「小論文や面接で能力をアピールできる」

もうひとつ、全体的に、推薦入試は幅広い偏差値の層から合格していると思いませんか? 例えば東京女子医科大学だと、70も偏差値を取っている方もいれば、こんなに下のほうの人も合格しているということが見てとれます。ある程度の成績がないと合格しない、というわけではなくて、いろんな偏差値の方が合格しているんです。
 
模擬試験では何を測っているのかというと、単純に学力です。普段、勉強しているものが、どれくらい反映できているのかというふうに、勉強面の成果を見るのが模擬試験です。その模擬試験の指標だけで見ると、推薦合格者の偏差値には大きな差がある。ではこれは何を指すのかというと、推薦入試は学力を見るだけでなく、その普段の勉強以外のもので合否が決まる可能性が、きわめて高くなっているんじゃないか、ということです。その「普段の勉強以外のもの」とは、具体的には「小論文・面接」でしょう。小論文と面接は未来の医療従事者としての能力を判断し、合否を決定する重要な役割を果たしているのです。
 
面接・小論文は、「何を問われているか」ということで、大きく二つに分けることができます。ひとつは、「ある程度の知識が必要で、そのうえで自分の考えを展開する」もの。例えば面接で“臓器移植をどう思いますか”という質問をされたら、臓器移植というものがわからないと答えられないですよね? あともうひとつは、「一人ひとりの答えが違う」もの。これは、医師になりたい理由ですとか、志望動機というものです。
 
面接では後者のほうが圧倒的に質問されることが多く、面接官とのやりとりで医師として必要なコミュニケーション能力を見られることになります。また、一般的に面接は、質問が進むうちに、だんだん問われることのレベルが高くなっていきます。
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