メディカルラボ通信
医学部の奨学金にはどんなものがある?公的奨学金から大学独自の奨学金まで詳しく解説
医学部の入学金や授業料に活用できる奨学金には、さまざまな種類があります。そこで今回は、公的な奨学金から、独自の奨学金制度を実施している大学まで詳しく解説します。ぜひ参考にして、学費の負担軽減にお役立てください。
CONTENTS
奨学金の種類
奨学金には、給付型と貸与型があります。それぞれの違いや給付を受けるための条件などについて解説します。
【返済不要】給付型
給付型は、受け取るだけの奨学金のことを指します。返済の必要がないため、卒業後の生活に影響を及ぼさないという利点があります。一方で、次に紹介する貸与型と比べると、出願基準や採用基準が厳しい傾向のため、注意が必要です。
【返済の必要あり】貸与型
貸与型は、借りるタイプの奨学金のことです。一般的に、奨学金として借りた分は、医学部を卒業した後に返済をしていく必要があります。また、利息もあるため借りすぎると負担が大きくなる可能性もあります。給付型と比べると出願要件の基準は高くなく、利用しやすい奨学金といえます。
医学部で利用可能な公的奨学金
ここでは、公的団体が提供している奨学金を紹介します。学校や居住地域などによっては利用できない奨学金制度もあるため、条件を満たしているか確認してから申し込みましょう。
1.日本学生支援機構奨学金
日本学生支援機構(JASSO)とは、学生の教育環境を整えることを目的とした独立行政法人です。経済的な事情により学費の支払いが難しい人に対して、奨学金事業を実施しています。
細かい金額は以下表に記載していますが、給付型の場合は最大75,800円/月、貸与型・無利子の場合は最大64,000円/月、貸与型・有利子の場合は最大160,000円/月となります。
分類 | 給付型、貸与型(無利子の第一種、有利子の第二種がある) |
金額 | 給付型:国公立・自宅通学月29,200円(生活保護世帯などは月33,300円)、国公立・自宅外通学月66,700円、私立・自宅通学月38,300円(生活保護世帯などは月42,500円)、私立・自宅外通学月75,800円 |
貸与型(第一種):国公立・自宅通学月20,000~45,000円、国公立・自宅外通学月20,000~51,000円、私立・自宅通学月20,000~54,000円、私立・自宅外通学月20,000~64,000円 | |
貸与型(第二種):月20,000~120,000円(私立は40,000円の増額が可) | |
条件(給付型の場合) | ・世帯収入や資産の要件を満たしていること進学先で学ぶ意欲がある学生であること |
2.国公立大学の奨学金・学費免除制度
国公立大学では、大学独自の奨学金制度を設けていることがあります。学業が優秀であるなどの条件を満たす必要はありますが、給付型、もしくは要件を満たすと返済免除などの場合が多く、卒業後の負担を軽減しやすいです。
また、学費免除制度も実施していることがあります。主に経済的理由で学費の納付が難しい学生向けの制度です。
入学金・授業料のない国公立大学を目指すなら、防衛医科大学校を検討できます。また、入学すると特別職国家公務員となるため、月額約12万円の学生手当と年2回の期末手当を受け取れます。
【防衛医科大学校医学科の学費免除】
募集人数 | 約85人 |
条件 | 卒業後、9年間は勤務に従事すること |
金額 | 月額約12万円の学生手当と年2回の期末手当 |
3.地方自治体の奨学金
地方自治体が実施している奨学金制度もあります。無利子の貸与型や給付型もあり、学生が利用しやすいように工夫されています。お住まいの自治体や進学先の自治体で検索してみましょう。
募集地域 | 都道府県ごとで設置 |
条件例 | 学業成績が優れていること、また学習意欲や居住地域、家計状況などが条件となる |
4.矯正医官修学資金
矯正医官修学資金とは、将来、全国の矯正施設で医官として働くことを前提として利用できる奨学金です。大学3年生の医学部生は月15万円を借りられます。また、卒業後3年以上矯正医官として働くと、奨学金の全額あるいは一部の返済が免除されます。
分類 | 貸与型 |
金額 | 月15万円 |
募集人数 | 2名 |
条件 | ・医学部医学科生で第3学年以上であること |
医学部で利用可能な私立大学の奨学金
私立大学でも、奨学金制度を設けていることがあります。いくつかの例を紹介します。
大学名 | 名称 | 分類 | 返済免除の有無 | 金額 |
東北医科薬科大学 | 東北地域医療支援修学資金
| 貸与型
| 有
| A方式:3,000万円(毎年500万円) |
国際医療福祉大学 | 特待奨学生制度 | 給付型 | ― | 奨学生S:1年次300万円、2年次以降280万円 |
帝京大学 | 帝京大学地域医療医師確保奨学金 | 貸与型 | 有 | 初年度:年額546万円 |
順天堂大学 | 学費減免特待生制度 | 減免 | 有 | 6年間で1,380万円 |
北里大学 | 医学部特待生制度(入学時特待生) | 減免 | ― | 第1種:6年間の学費全額(3,890万円) |
近畿大学 | KINDAI病院奨励賞 | 給付型 | 有 | 年額100万円 |
兵庫医科大学 | 兵庫医科大学兵庫県推薦入学制度 | 貸与型 | 有 | 6年間総額4,480万円 |
産業医科大学 | 産業医科大学修学資金貸与制度 | 貸与型 | 有 | 6年間総額1,919万円 |
自治医科大学 | 医学部修学資金貸与制度 | 貸与型 | 有 | 6年間総額2,300万円 |
※2024年度入試(一部大学(兵庫医科大学 /産業医科大学)は2023年度入試)の情報。申込みの際は最新情報をご確認ください。
東北医科薬科大学(東北地域医療支援修学資金)
東北医科薬科大学では、東北地方の6県で働くことを前提に貸与型の奨学金制度を実施しています。
募集人数 | 宮城県(A方式):30名 |
金額 | A方式:3,000万円(毎年500万円) |
条件 | A方式(宮城県):宮城県知事が指定する医療機関等に原則10年間勤務すること |
国際医療福祉大学(特待奨学生制度)
国際医療福祉大学では、給付型の奨学金制度を実施しています。奨学生Sに選ばれると、授業料に加え、学生寮の寮費も全額免除となります。また、奨学生Aでも免除される金額が大きいため、学費の負担を大きく軽減することが可能です。
募集人数 | 奨学生S:一般選抜20名 |
金額 | 奨学生S:1年次300万円、2年次以降280万円 |
条件 | なし |
帝京大学(帝京大学地域医療医師確保奨学金)
帝京大学では、卒業後に地域医療に従事することを条件として貸与型の奨学金制度を実施しています。ただし、大学卒業後2年以内に医師免許を取得し、帝京大学と連携している福島県・千葉県・茨城県・静岡県のいずれかの県の医師修学資金に申請し、特定の勤務地で9年間以上勤務すると返済が免除されます。
募集人数 | 4名程度 |
金額 | 初年度:年額546万円 |
条件 | 福島県・千葉県・茨城県・静岡県のいずれかの県の医師修学資金に申請し、卒業後には指定された機関で指定された期間、勤務する意思があること |
順天堂大学(学費減免特待生制度)
順天堂大学では、成績優秀者を対象に学費減免制度を実施しています。入試試験における成績上位者にあたる場合は応募しましょう。返還義務も成績以外の条件も特にないため、比較的利用しやすい奨学金制度です。
募集人数 | 一般A方式二次試験合格者の成績上位10名 |
金額 | 6年間で1,380万円免除 |
条件 | 学力試験および人物識見が優秀であること |
北里大学(医学部特待生制度)
北里大学では、6年間の学費全額(3,890万円)が免除される奨学金制度と、入学金・授業料一部(6年間1,945万円)が免除される奨学金制度を実施しています。いずれも給付型のため、返済の負担がなく利用しやすい制度です。ただし、募集人数が決まっている制度ではないため、年度によっては利用できない可能性もあります。
募集人数 | 若干名(選考面接あり) |
金額 | 第1種:6年間の学費全額(3,890万円) |
条件 | なし |
近畿大学(KINDAI病院奨励賞)
近畿大学医学部では、独自の奨学金制度「KINDAI病院奨励賞」を設置しています。在学中に1回のみ利用できる制度で、選考に通過した場合は100万円の給付を受けられます。
募集人数 | 5年生と6年生あわせて3名以内 |
金額 | 年額100万円 |
条件 | 成績優秀者かつ人格的に優れていること、卒業後の初期研修を近畿大学病院で行うこと |
兵庫医科大学(兵庫医科大学兵庫県推薦入学制度)
兵庫医科大学の兵庫県推薦入学制度で入学した場合、入学金や授業料、実験実習費などのすべての費用を対象とした貸与型の奨学金制度を利用できます。卒業後に兵庫県が定める特定の医療機関で医師として9年間働くことで、返済が免除されます。
募集人数 | 3名 |
金額 | 6年間総額4,480万円 |
条件 | 在学中に兵庫県が指定した研修に参加したうえで大学を卒業すること |
※2023年度入試の情報です。申込みの際は最新情報をご確認ください。
産業医科大学(産業医科大学修学資金貸与制度)
産業医科大学では、入学者全員を対象に修学資金貸与制度を実施しています。貸与制度ですが、卒業後に貸与を受けた期間の1.5倍の期間、産業医などの返還免除対象の仕事に従事すると返済が免除されます。例えば6年間の全額の授業料を貸与した場合は、卒業後9年間産業医などに従事すると全額免除です。
募集人数 | 入学者全員 |
金額 | 6年間総額1,919万円 |
条件 | 貸与を受けた期間の1.5倍の期間、産業医などの返還免除対象職務に従事すること |
※2023年度入試の情報です。申込みの際は最新情報をご確認ください。
自治医科大学(医学部修学資金貸与制度)
自治医科大学では、入学者全員を対象に修学資金貸与制度を実施しています。貸与制度ですが、卒業後に貸与期間の1.5倍の期間、地域の公立病院などの医師として働くと返済が免除されます。
募集人数 | 入学者全員 |
金額 | 6年間総額2,300万円(1年次:500万円,2~6年次:360万円) |
条件 | 貸与を受けた期間の1.5倍の期間、産業医などの返還免除対象職務に従事すること |
学校選びで迷ったときは専門家に相談してみよう
奨学金には一定の条件はあるものの、給付型の奨学金も多くあるためチェックしてみましょう。大学が独自に実施している奨学金制度は給付額も大きい傾向にあります。また、今回紹介したもの以外に、民間の奨学金という選択肢もあります。志望校を決める際に、自分にあった奨学金を探してみましょう。
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