メディカルラボ通信
医学部の地域枠とは?メリットやデメリット、地域枠のある大学も詳しく紹介
ここ最近、医学部進学を考えている受験生の多くは、一般選抜に加えて「地域枠」での受験も考えるようになりました。また、女性の医学部志望者の増加に伴い、地元志向も高まってきています。受験機会を増やし、医学部合格の可能性を広げる「地域枠」は、さまざまなことが一般選抜とは大きくことなります。どのように異なるのか、特徴などをご紹介します。
CONTENTS
医学部の地域枠とは?
医学部の地域枠とは、主に地域医療を支える医師の確保を目的に、一般選抜とは別区分で「地域枠」として、医学部生を募集するための入試区分です。
大都市圏以外では、医師不足や診療科の偏在が深刻化しています。これを解消するために多くの大学で入試を実施し、主に学校推薦型選抜や総合型選抜として募集をしています。(一般選抜の中に「地域枠」の募集区分を設けている大学もあります。)
地域医療に貢献する医師を育成し、卒業後にその地域で一定期間勤務することを前提に設けられた枠であり、国公立大学だけでなく、私立大学でも実施されています。高等学校等の成績や出身地などいくつかの制約が設けられることが多いですが、将来的にその地域での医療に従事することができるのが特徴です。
医学部の地域枠のある大学
全国の医学部地域枠についていくつかご紹介します。都道府県によって、医師数の差があるため、県ごと、また年度ごとによっても定員数が異なります。詳細は各大学のHPや募集要項で確認を行いましょう。
<地域枠を設けている大学一覧(国公立大学・一部抜粋)>
大学名 | 入試区分 | 募集定員 |
旭川医科大学 | 学校推薦型選抜 総合型選抜 | 道北・同東特別選抜(7名) 北海道特別選抜(40名) |
筑波大学 | 一般選抜前期 | 地域枠全国(5名)・地域枠茨城(8名) |
千葉大学 | 一般選抜前期・地域枠 | 20名 |
東京科学大学 | 学校推薦型選抜・地域特別枠 | 茨城県(5名以内)・長野県(5名以内)・埼玉県(5名以内) |
信州大学 | 学校推薦型選抜 | 35名(長野県地元出身者枠13名・全国募集地域枠22名) |
名古屋大学 | 一般選抜前期・地域枠 | 5名 |
※上記は2025年度入試を参照しています。最新入試情報は各大学のHPよりご確認ください。※出願要件は、大学ごと に異なります。詳細は各大学の募集要項にてご確認ください。
<地域枠を設けている大学一覧(私立大学・一部抜粋)>
大学名 | 入試区分 | 募集定員 |
昭和大学 | 地域枠選抜 | 新潟県(7名)・静岡県(8名)・茨城県(4名)・山梨県(2名) |
愛知医科大学 | 学校推薦型選抜 | 愛知県地域特別枠A方式(約5名) |
近畿大学
| 一般選抜・前期 | 大阪府(2名)・和歌山県(1名)・静岡県(6名) |
一般選抜・後期 | 静岡県(4名) | |
福岡大学 | 学校推薦型選抜・地域枠 | 10名 |
※上記は2025年度入試を参照しています。最新入試情報は各大学のHPよりご確認ください。※出願要件は、大学ごと に異なります。詳細は各大学の募集要項にてご確認ください。
医学部の地域枠のメリットとは?
主に以下の3つがメリットとして挙げられます。
学費が抑えられる
地域枠で合格をした場合、奨学金や修学資金を受けることが可能であり、「〇〇県医師育成奨学金制度」など、主にその大学が所在する都道府県名大学から給付されます。(金額は給付する都道府県により異なります。)そのため、医学部を志望している受験生・保護者の方にとって授業料や生活費を軽減することができ、要件を満たせば利用が可能です。
例えば順天堂大学・杏林大学・日本医科大学が実施している「東京都地域医療医師奨学金(特別貸与奨学金)」は、入学金や授業料等の他に生活費として6年間・月額10万円(計720万円)と各大学の6年間の学費を給付する制度もあります。
東京都地域医療医師奨学金(特別貸与奨学金)
大学名 | 修学費(6年間計) | 生活(6年間計) | 合計額 |
順天堂大学 | 2,080万円 | 720万円 | 2,800万円 |
杏林大学 | 3,700万円 | 720万円 | 4,420万円 |
日本医科大学 | 2,200万円 | 720万円 | 2,920万円 |
入学しやすいが勉強の質は担保されている
「地域枠」は出願の条件規定が伴う分、一般選抜よりも志願者数・倍率が低くなったり、ボーダーラインも低くなったりする大学が多いです。一方で、入学後は、各都道府県が策定したキャリア形成プログラム等で、地域医療を十分学ぶことができます。また、卒業後は指定された地域の病院で勤務を義務付けられているため、学習支援や就職支援のサポート体制が整っています。将来のキャリアプランが立てやすいことも地域枠の利点です。
医師国家試験の合格率が高い
「地域枠」の面接試験において、一般選抜に比べると、本人の医師志望理由や将来の目標も深く質問されることが多いです。「地域枠」の入学者は地域事情にも詳しいことや、入学者同士の結束感など、学部在学中は勉強に専念しやすい環境にもあります。また、留年をしたり医師国家試験の合格できない場合は、奨学金給付の打ち切りや一括返済が求められる場合もあるために、留年率が低く、師国家試験の合格率が高いことも「地域枠」の特徴です。
生まれ育った地元や、地域への社会貢献をしたいと考えた際に、一生涯を通して地域へ医療従事し、病気やケガで苦しみ困っている人々に対し、医療貢献できることはメリットです。
また、地域枠での入学者は、在学中は奨学金や修学資金などを受け取れるため経済的負担も
軽減されます。給付された奨学金や修学資金は貸与になりますが、一定期間、指定の医療機関に勤務するなど一定の条件を満たせば返済の必要はなくなります。
【後悔?】医学部の地域枠のデメリットとは?
ここまで「地域枠」のメリットを中心にお伝えしましたが、もちろん地域枠で入学した人の中には後悔をする人も少なからずいます。ボーダーラインや学費面だけを考えて、地域枠を志望する受験生もいますが、卒業後の一定期間を地方や指定の医療機関で勤務する義務など条件が伴うため、しっかりと将来を見据えて受験を検討 することが大切です。
以下の3つがデメリットとして挙げられます。
卒業後の選択肢(勤務先)が狭まる
地域枠での合格・進学をする場合、一定期間地方や指定医療機関での勤務が義務付けをされています。ほとんどの大学では、大学卒業後9年間を指定地域・医療機関にて勤務を行います。また、各都道府県が定める「キャリア形成プログラム」に沿って卒業後の進路が決まりますが、必ずしも自身が希望する勤務先の病院や勤務地域、診療科で医療活動を選択できるとは限りません。
奨学金を一括返済しなければならないケースがある
「地域枠」で入学した場合には、入学後と卒業後に各都道府県が定める義務を守らなければなりません。守らない場合には、支給を受けた奨学金や修学資金を一括返済しなければならないケースがあります。例えば、医学部を退学した場合や、留年を繰り返した場合、何度も医師国家試験に不合格の場合。また、卒業後に「キャリア形成プログラム」に従った医療活動を行わない場合もあり、一般的に利子をつけての返済をする必要があるため、受験の際に把握しておく必要があります。
将来の人生設計が早くに決まってしまう
「地域枠」で入学した場合、卒業後の勤務先や勤務期間が条件として義務付けられます。へき地や離島での医師確保のため、地方での勤務を指定され、最先端の医療や設備・技術に触れる機会は少なくなります。
例えば、入学時は地域枠医療に貢献しようと考えていても、大学在学期間で再生医療に興味を持ち、iPS細胞の研究に取り組みたいという場合も、希望した進路やキャリアに進むことができない可能性が高いです。
医学部の地域枠でよくある疑問
「地域枠」は、一般選抜と大きく異なります。選抜方法や合格に必要なボーダーライン、また医学部の6年間のカリキュラムだけではなく、卒業後の進路については大きく異なります。「地域枠」について多くの受験生から受ける質問についてお答えします。
Q.医学部の地域枠から離脱することは可能?
「地域枠」で入学した場合、病気など、やむを得ない理由以外では、ぼぼ不可能だと考えた方が良いでしょう。卒業後の離脱は、奨学金や修学資金の利息を付けての一括返済を求められる場合や、専門医の認定を受けることが不利になるなど、予想以上の大きなデメリットもあります。対応についての詳細は、各都道府県によって異なりなります。
Q.医学部の地域枠で定員割れすることはある?
地域枠は、大学によって出身地域や出身高校による受験制限があります。また、1つの高校から出願できる人数制限を設けている大学もあるために、一般選抜よりも志願者倍率は低くなります。しかし、近年は受験機会を1回でも増やしたいと思う受験生が増加したことで、定員割れする大学はほとんどありません。女性の医学部志願者の増加や、医療がクローズアップされるようになったコロナ禍以降は医学部ニーズも高まり、学力の高い志望者も増加傾向となっています。大学によっては、一般選抜とほぼ変わらない大学もあります。
Q.医学部地域枠の狙い目はある?
地方の国公立大学の学校推薦型選抜や総合型選抜の「地域枠」のうちで、地元出身者のみが受験可能など、出願要件がある場合、一部の大学では、一般選抜と比較すると入りやすい大学はあります。合格最低点として公表している大学もありますが、前述の通り、入学後の条件などを考慮して出願をする必要があり、入りやすいからという理由で地域枠を志望することはお勧めできません。
医学部地域枠は、条件に合えば 、魅力的な受験選択肢の1つに。
医学部地域枠入試について説明をしてきましたが、受験条件を満たし、卒業後のキャリア形成についても合意となる場合、1つの医学部受験の選択肢としてはお勧めの入試方法です。各大学の示したプランや、その地域医療についても理解を深めた上で受験を検討しましょう。また、実際に受験をする場合には「地域枠」に関する出題を問われるため、合格に向けた対策もしっかり行いましょう。
メディカルラボは全国26校舎を展開しており、地元の大学の入試情報や、地域枠での合格者も多く輩出しています。一般的に公開されていない入試内容や出題傾向に関しても、実際に受験をした先輩からの受験レポートを集約し、情報共有ができているため学科試験はもちろん、面接や小論文などの対策も可能です。
周りに受験者が少ない「地域枠」や、どんな対策をするべきかお困りの際は、是非メディカルラボへご相談ください。医学部受験知識が豊富な進学アドバイザーがご相談に承ります。