メディカルラボ通信
2023年1月号『令和5年度 大学入学共通テストを終えて』
2023.1.26 公開
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令和5年度の大学入学共通テストが終わりました。今年は多くの科目で,昨年大きく下げた平均点が回復し,ボーダー得点率も2年前の水準に戻りつつあります。1/23(月)からは国公立大学の出願が始まっていますが,ボーダーラインなどを参考に,慎重に出願校を見極めることが重要です。
今回のメディカルラボ通信では,速報値を基に令和5年度の大学入学共通テストを振り返ります。
今回のメディカルラボ通信では,速報値を基に令和5年度の大学入学共通テストを振り返ります。
CONTENTS
① 志願者数の推移
平成30年度~令和5年度までの志願者数の推移をまとめました(参考:大学入試センター発表資料)。令和2年度までは大学入試センター試験(以下,センター試験),令和3年度以降は大学入学共通テスト(以下,共通テスト)のデータです。
志願者総数は512,581人で,前年度と比べて17,786人減となりました。これは共通テスト初年度の令和3年度の減少率に近い値です。ただ,令和3年度は高卒生の志願者数減が大きく影響していましたが,今年は少々状況が異なります。今年の志願者数の内訳を見ると,現役生の志願者数は436,873人(前年度比12,496人減),志願者数に占める割合でみると85.2%(前年度比0.5ポイント増)となりました。これは「令和4年度の共通テストの難度を見て,私立大専願者を中心に共通テスト離れが起きたこと」などが理由として挙げられます。センター試験は問題の形式や難度が私立大の一般入試と似ていたため,私立大専願者の予行演習として活用できていました。しかし,共通テストは大幅に出題傾向が変わり,専用の対策が必要になったため,私立大専願者から敬遠されるようになったのではないかと考えられます。
その一方で,高卒生は前年度とほぼ同じくらいの減少に留まり,志願者数は71,642人(前年度比5,143人減),志願者数に占める割合で14.0%(前年度比0.5ポイント減)となりました。高卒生が減少している理由としては,「少子化に伴う現役合格率の上昇により既卒の受験生そのものが減少していること」などが考えられます。
② 平均点概況
令和5年度の共通テストの科目別平均点中間集計(大学入試センター発表/2023/1/20現在)を,医学部入試で課される主要科目を中心にまとめました(数学Ⅰ,数学Ⅱ,理科①,地理歴史のA科目は省略)。
科目別の平均点を見ると,「数学Ⅰ・A」,「数学Ⅱ・B」が前年と比べて約18点上がりました。一方で,「倫理,政治・経済」が約9点,「英語(リーディング)」が約8点,「世界史B」が約7点下がりました。この結果,多くの国公立大医学部で必要となる5教科7科目理系型の総合平均点(河合塾の共通テストリサーチに基づく予想値)は37点上がりました。これは900点満点に対して約4.1%に当たるので,各大学のボーダーラインも平均4%程度上がるものと予測できます。
令和5年度の共通テストは,「令和4年度並み,もしくはそれよりも難しい出題となるのでは」と想定されていましたが,令和4年度に数学を中心に大幅に平均点を下げたこともあり,各所から批判の声も聞かれました。今年は読解力・思考力を要求しつつも,センター試験時代に見られたような基本に忠実な設問も散りばめられており,作問者の苦労が窺える問題構成となっていました。
とは言え,昨年度に引き続き「試験時間に対する問題文の量が多い」点には苦戦した受験生も多かったようです。例えば,平成31年度センター試験の数学Ⅱ・Bは全15ページでしたが,令和4年度共通テストの数学Ⅱ・Bは全26ページ,今年の数学Ⅱ・Bは全29ページと,約2倍の分量になっています。空白ページを含むことを考慮しても,分量が大幅に増加しています。理系科目と言えども,与えられたデータや長い文章から必要な情報を読み取る能力が求められていることが分かります。
平成31年度 センター試験〔数学②表紙】 | 令和4年度 共通テスト〔数学②表紙〕 | 令和5年度 共通テスト〔数学②表紙〕 |