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メディカルラボ通信

2023年3月号『医学部を目指すための学習アドバイス~英語編~』

2023.3.27 公開
 
 23年度入試も終わり,次年度に向けての準備を始める時期となりました。
 今回はメディカルラボの英語講師の国定誠先生に,23年度入試の傾向を分析していただくとともに,医学部を目指す上で必要な英語学習のポイントについてアドバイスをいただきました。

大学入学共通テストの英語について

 令和3年度から始まった大学入学共通テスト(以下,共通テスト)は3回目となったこともあり,出題形式や設問数もほぼ固定されてきました。昨年度の形式から大きな変化がないということは,入試前の模擬テストなどで十分練習できたはずですが,平均点はリーディングが61.80点から53.81点へ大きく下がってしまいました(一方,リスニングは59.14点から62.35点へ上昇)
 その理由を考えてみると,読解量はほぼ昨年並みでしたが,処理する情報量が増加したことと,やや語彙レベルが上がったことが挙げられます。例えば,第3問のBの1や第5問の3のような選択肢を時系列順に並べ替える問題は,本文を読み返していると時間が不足しますし,時間を優先して本文内容を思い出しながら解答しようとするとミスが起こりやすくなります。
 また,語彙レベルについては,第6問のBのクマムシに関する文章中に登場したmetabolism「代謝率」,ventral「腹面の」,salivary gland「唾液腺」など,医学部受験生でもおそらく知らないであろう単語が散見されました。仮に大問1から問題順に取り組んでいたとすると,これが最後の長文となります。時間が不足した状態でこれらの語に遭遇したら,おそらく普段のように語彙を推測することは容易でなかっただろうと思います。他にも理由はあると思いますが,上記2点がリーディングの平均点が低下した大きな要因ではないかと推測します。
 「知識・技能」に加えて「思考力・判断力・表現力」を問うことを目的に始まった共通テストですが,この3年間の出題傾向を見ると「速読・速解」,かつそのために必要な「語彙力」・「判断力」が必要な試験と言えるでしょう。さらに,英語に限らず,ほぼ全ての問題で図表やグラフが載っていることから,それらを的確に読み取る力と情報を整理する力も要求されています。英語学習の土台となる語彙・文法・英文解釈に対する受験生の意識の低さは今でも散見されますが,今年度の第6問のBと同レベルの英文が出題されれば,受験生が語彙の習得にもっと時間をかけるようになることが予想されます。その結果,英語学習への意識が改善されることを期待しています。

 

国公立医学部の個別学力試験の英語について

 英語の運用能力を重視する共通テストとは異なり,国公立医学部の個別学力試験では「表現力・思考力・知識」が問われます。ある意味,共通テストでは調べきれなかった側面を補うテストであると言えます。そもそも大学入試の問題は,受験生が講義,議論,研究,論文作成など,大学入学後に必要な活動を行う上で十分な能力を有するか調べるものです。そのため,個別学力試験では読解問題は論説文,英作文問題は自由英作文中心の出題になっています。しかしこの傾向はセンター試験の時代からあるもので,共通テストの導入に伴って変化したものではありません。ただ共通テストが日常的な話題についての読解問題中心の出題であるため,受験生にとって学術論文の読解や,文法を意識しながら書く必要がある自由英作文は,センター試験が実施されていた時代よりも難しく感じられるかもしれません。
 多くの国公立大の英語は他学部との共通問題であるため,長文のテーマは医療科学系だけではなく,人文系や社会系の英文も取り上げられます。しかし,単科医科大となると話は別です。たとえば浜松医科大では「mRNAを利用したワクチンが開発されるまで」に関する医療系の長文が出題されました。
 文法に関しては,読解問題の一部で前置詞や動詞の空所補充また語句整序が問われることはありますが,私立医学部などで頻出の「短文空所補充形式で文法知識のみ問われる設問」はほぼ出題されません。しかし,自由英作文などでは文法の間違いが減点対象となるため,正確な文法の知識は不可欠です。その一方で,共通テストと同様に語彙の重要性は高まっています。空所補充や同意語選択で語彙力が問われていますが,ただ単に多くの意味を知っていればよいというわけではなく,各品詞の語法やコロケーションの知識がないと正解できないものや,知識よりも文脈判断を優先するものがあるため注意が必要です。

 


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