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メディカルラボ通信

2023年6月号『医学部を目指すための学習アドバイス~生物編~』

2023.6.24公開
 
 夏至も過ぎて,もうすぐ7月です。早朝に勉強している受験生の皆さんは,外が白んでくる時間が早まったことで,日の長さを実感している人も少なくないのではないでしょうか。
 高校生の皆さんはそろそろ期末考査の時期ですね。定期考査は日々の授業で学んだことがきちんと定着しているかを確認する機会と言えます。ところで「まだ受験生でもないし定期考査は適当にクリアしておけばいいや」と考えていませんか?総合型選抜や学校推薦型選抜では,調査書における「学習成績の状況」が評価の対象になります。これは学期末に受け取る通知票の5段階評価の平均値です。高校1年から3年1学期までの成績が対象となるため,受験学年になってから数値を大きく改善することはできません。医学部を目指す際には,受験機会を増やす意味でも総合型選抜や学校推薦型選抜が重要です。高1生・高2生の皆さんは,今のうちから将来の医学部受験を意識して,日々の学習も力を抜かずに頑張りましょう。

 さて,今回はメディカルラボの生物講師の小川直秀先生に,23年度入試の傾向を分析していただくとともに,医学部を目指す上で必要な生物学習のポイントについてアドバイスをいただきました。

2023年度の大学入学共通テストを振り返る

 2021年度から実施された大学入学共通テスト(以下,共通テスト)は今回が3回目となりました。平均点を見ると,21年度の第1回(第1日程)は72.64点と理科②の中で最も高かったのですが,22年度の第2回は48.81点と大きく低下しました。そして,注目された23年度(第3回)はさらに低下し,得点調整実施後で48.46点と,理科②の中で最も低くなりました。

 大学入試センターが発表している共通テスト問題作成の方針には,以下のように記されています。

平成21年告示高等学校学習指導要領において育成することを目指す資質・能力を踏まえ,知識の理解の質を問う問題や,思考力,判断力,表現力等を発揮して解くことが求められる問題を重視する。

(大学入試センター『令和5年度 大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト問題作成方針』より抜粋)

 第1回(2021)の共通テストでは,教科書に扱われていないような問題が多く扱われたものの,問題文を読むだけで正答にたどりつけるような問題が多く見られました。その結果,平均点が近年にないほど高くなりました。しかし,第2回(2022)では「思考力,判断力,表現力等を発揮して解くことが求められる問題を重視」が極端に強まったため,解答に際して知識と複数のデータを組み合わせる問題が増加しました。それによって分量が増加し,平均点の大幅な低下につながったと考えられます。第2回の実施後に大学入試センターが発表した『令和4年度問題評価・分析委員会報告書』には以下のように記されています。

平均点は目標値にほぼ該当するものとなったが,過去や他科目の平均点との比較から,生物が大幅に難化した印象が生じたのは残念である。

(大学入試センター『令和4年度 大学入学共通テスト問題評価・分析委員会 報告書』より抜粋)

 委員会としては,過去や他教科と比較すると「大幅に難化した」という「印象が生じた」と捉えています。それを踏まえての今回の第3回だったのですが,さらに問題文が長くなり,図や表も増えたため,与えられた情報が多くなり,高度な読解力,思考力,分析力などを必要とする問題になりました。結果,前述したように平均点は第2回よりさらに低下し,得点調整が実施されるに至りました。

 第3回目までの共通テストを踏まえると,「知識や複数のデータを組み合わせる問題」をいかに攻略するかがカギになると思われます。限られた時間内に豊富な情報を処理する能力を高めるためには,各社の共通テスト模試を受験することが最適解と思われます。また,このタイプの問題の解き方に慣れるために,国公立大学の実験考察問題の演習をしておくのも良いでしょう。

私立医学部の出題傾向

 23年度の私立医学部入試については,現在判明している範囲では特に大きな変化は見られないようです。その中でも注目したものを挙げていきます。
 
 関西医科大学[前期]では「細胞小器官の名称が英語で書かれた選択肢から正しいものを選ぶ問題」が出題されました。各出版社の教科書を見ると,数研出版以外の各出版社では,ほとんどの生物用語が英語でも記されています(数研出版はごく一部の生物用語のみ英語表記を併記)。今回限りの出題なのか,この流れが他の大学にも広がっていくのか気になるところです。
 久留米大学では新型コロナウイルス感染症に関して,「ウイルスベクターワクチンとmRNAワクチンの違いについて」の問題が出題されていました。新型コロナウイルス感染症を中心とした感染症対策についての出題は当分続いていくと思われますので,その対策をしっかりしておく必要があります。
 近年増加しているのが遺伝子に関する発展的な問題です。近畿大学[前期]では「エピジェネティックス」に関する問題,埼玉医科大学[前期]では「ゲノム編集」に関する問題が出題されました。また,東京医科大学では「遺伝子重複とハプロタイプ」に関する問題,兵庫医科大学では「トランスジェニックマウス」に関する問題が出題されました。典型的な遺伝子の問題も引き続き出題されていますが,教科書ではあまり深く扱っていない内容も出題されつつあります。
 意外なところを深く問う問題では,藤田医科大学[前期]「神経堤細胞」に関する問題が出題されました。その名称を知っている受験生は多いと思いますが,あまり深い知識は持っていないと思われます。あまり深く扱わない用語でも,余裕があれば図説(図録)などを使って確認しておくといいでしょう。

 大学別の注目ポイントも挙げておきます。愛知医科大学では,生物基礎の『生物の多様性と生態系』,生物の『生態と環境』の両分野は長らく出題されていませんでしたが,23年度入試では今世紀初めて「植生,個体群」について出題されました。岩手医科大学近畿大学のように,長らく特定の分野が出題されていない大学も注意が必要です。

 


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