2024年1月号『令和6年度 大学入学共通テストを終えて』

①　志願者数の推移

　令和2年度～5年度までの志願者数の推移をまとめました（参考：大学入試センター発表資料）。令和2年度は大学入試センター試験（以下，センター試験），令和3年度以降は大学入学共通テスト（以下，共通テスト）のデータです。
　志願者総数は491,914人で，前年度と比べて20,667人減となり，センター試験から共通テストに変わった令和3年度（22,454人減）と同程度の減少が見られました。ただし，令和3年度は現役生が約2,400人減に対して高卒生が約20,000人減だったのに対し，令和6年度は現役生が約17,000人減に対し高卒生が約3,400人減と，現役生志願者の減少が目立ちました。これは「過去3回の共通テストの難度を見て，私立大専願者を中心に共通テスト離れが起きたこと」「現役生が学校推薦型選抜や総合型選抜による合格を目指す傾向が高まったこと」などが理由として挙げられます。共通テストの前身のセンター試験は基礎学力の達成度を見るものだったため，私立大の一般選抜対策としても活用できましたが，共通テストは問題の形式や難度が異なることに加え，情報処理能力を測る目的が顕著であるため，私立大専願者から敬遠されたと考えられます。また，私立の進学校を中心に探究学習に力を入れる高校が増えたこともあり，総合型選抜による「年内決着」を狙う受験生が増えており，超難関大を除けば一般選抜よりも総合型選抜や学校推薦型選抜の方がハードルが低いため，あえて共通テストは受験しないという受験者層が増えてきているものと考えられます。
　その一方で，高卒生の志願者数は68,220人（前年度比3,422人減），志願者数に占める割合で13.9%（前年度比0.1ポイント減）となりました。高卒生の減少理由としては，「少子化に伴う現役合格率の上昇により既卒の受験生そのものが減少していること」などが考えられます。

②　平均点概況

　令和6年度の共通テストの科目別平均点中間集計（大学入試センター／2024/1/19発表）を，医学部入試で課される主要科目を中心にまとめました（数学Ⅰ，数学Ⅱ，理科①，地理歴史のＡ科目は省略）。
　科目別の平均点は前年と比較して，『国語』が約10点，『英語(リスニング)』が約5点，『生物』が約6点，『世界史Ｂ』が約2点，『地理Ｂ』が約7点上がりました。「国語」は現代文，古文ともに取り組みやすい問題だったことが要因と考えられます。その一方で，『英語』は約3点，『数学Ⅰ・数学Ａ（以下，『数学Ⅰ・Ａ』）』『数学Ⅱ・数学Ｂ（以下，『数学Ⅰ・Ａ』）』はそれぞれ約4点ずつ，『日本史Ｂ』『現代社会』で約4点ずつ平均点が下がり，最も大きく平均点が下がった『政治・経済』では約7点の低下となりました。『英語』はX（旧Twitter）上で「英語難化」がトレンド入りするなど「難しかった」という声が多く聞かれ，それが平均点にも表れたと言えます。全体の語数が昨年と比べて300語増えた上に，細部まで注意深く読む必要がある問題が増えており，より精緻な読解力が要求されました。『数学Ⅰ・Ａ』『数学Ⅱ・Ｂ』は計算量そのものは減少したものの，依然として論理的思考力を問う設問が多かったことが要因と考えられます。
　この結果，多くの国公立大医学部で必要となる5教科7科目理系型の総合平均点（河合塾の共通テストリサーチに基づく予想値）は，「国語」や「生物」，さらに理系の受験生が多く受験する「地理B」の平均点上昇を受けて8点上がりました。これは900点満点に対して約0.9%に当たるので，各大学のボーダーラインは横ばいもしくは平均1%程度の上昇に留まるものと予測できます。

　令和6年度の共通テストは，事前に想定されていた通り「ほぼ前年並み」となりました。とは言え，依然として「試験時間に対する問題文の量が多い」点には苦戦した受験生も多かったようです。
　例えば，平成31年度センター試験の数学Ⅱ・Ｂは全15ページでしたが，今年の数学Ⅱ・Bは全28ページでセンター試験の約2倍の分量です。空白ページを含むことを考慮しても，分量が大幅に増加していることがわかります。理系科目と言えども，与えられたデータや長い文章から必要な情報を読み取る能力が求められていることが分かります。

平成31年度 センター試験〔数学②表紙】	令和6年度 共通テスト〔数学②表紙〕