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メディカルラボ通信

2024年3月号『医学部を目指すための学習アドバイス~英語編~』

2024.3.27 公開
 
 24年度入試も終わり,次年度に向けての準備を始める時期となりました。
 今回はメディカルラボの英語講師の国定誠先生に,24年度入試の傾向を踏まえ,医学部を目指す上で必要な英語学習のポイントについてアドバイスをいただきました。

大学入学共通テストの振り返り/国公立医学部の出題の特徴とその対策

 令和6(2024)年度の大学入学共通テスト(以下,共通テスト)が1月13日・14日に実施されました。英語については,リーディングの平均点が53.81点から51.54点と難化した一方,リスニングの平均点は62.35点から67.24点と易化しました。リーディングの難化の要因は内容そのものの難化ではなく,素材文の語数が約400語増加して約4,900語になったためと推測されます。
 この傾向を踏まえると,今後も速読を重視した学習を心掛ける必要があると感じますが,ここで押さえておきたいのは『読解内容』です。論説文は大問6のみで,他の大問1~5はチラシ,ブログ,アンケート,物語など日常的なもので,より実生活に役立つものをスピーディに正確に読み取る力を測る問題となっています。したがって,これらを速読する(必要な情報をかいつまんで拾い読みする)練習は必要ですが,論説文読解の場合は「素早く正確に読み取る」という最終的な目標は同じでも,そこに至るまでのアプローチは大きく異なります。
情報を素早く読み取るスキャニング
 スキャニングは特定の情報(詳細)を抜き出す為に使うものなので,スキャニングを行う前に「自分がどんな情報を求めているのか」を知っておく必要があります。試験では設問を読み,必要な情報を探すように読むことになるのです。そのため文章を読むというよりは「検索する」というイメージになります。
文章の概要を理解するスキミング
 新聞記事や物語などの英文を丁寧に読んでいては時間が足りない場合は,段落を要約しながら,最終的に筆者が何を主張しているかについて全体的な理解を目指します。このような読み方をスキミングと言います。これは大問4や大問5など,500語以上ある英文に用いると効果的です。段落の中心となる文,全体の内容の結論となる文がどこにあるかを探すイメージです。
論説文の読解に不可欠な「精読」
 論説文の場合は,話は変わってきます。なぜなら,国公立大の2次試験や私立医学部の一般選抜で出題される読解問題のほとんどが論説文であるためです。もちろん,共通テストの第6問のように短い時間で処理する必要がある場合は,スキャニングやスキミングが必要となりますが,まずは正確な理解が不可欠です。そのためには,基本的な語彙力・文法力・文構造把握力を身につける必要があります。もしスキャニングやスキミングのみで国公立大の2次試験に挑んでしまうと,既知の内容の場合は問題ないかもしれませんが,その文献を読んで内容を理解していく場合,手が出せなくなってしまうのです。次の名古屋市立大学医学部で出題された問題はその一例です。
Without constant attention, the design decays. Without active maintenance, the boundaries between each product become uncleared, and coherence is lost. By the 1980s, Sloan’s design had faded away―a vivid illustration of the power of entropy. General Motors had uncleared its brands and divisions.
問:下線部 entropy の説明として,もっとも適切なものを下記から選びなさい。
① A state in which things are not managed properly
② A state in which competition is controlled
③ A state in which branding is handled effectively
④ A state in which employees behave as they please
(2024年度 名古屋市立大学[医]大問1・問7より引用)
【和訳】
 絶えず注意していないと,意図は朽ちてしまい,積極的に維持しないと,各々の製品の境界線は曖昧になり,一貫性は失われてしまう。1980年代までにSloanの意図したものは自然消滅してしまったが,これこそがエントロピーの力を明確に説明したものである。(その結果)ジェネラルモーターズはそのブランド力と(商品の)区分がはっきりしなくなってしまった。

【解答・解説】
 エントロピーという言葉は物理などで用いられているため,耳にしたこともあるかもしれませんが,文脈からその意味を想像する必要があります。まず,文構造を考えると “Sloan’s design had faded away” はダッシュ(―)で繋がれています。このダッシュは,文章や語句を後ろから補足説明したり,具体的に言い換えたりする役割を持っています。よって,この部分を言い換えた内容が “a vivid illustration of the power of entropy” であると判断できます。「Sloanの意図したものは自然消滅した」という内容が「どんな力を明確に説明したものか」と考えると,「意図的に計画したものが自然に消滅したということは,適切に管理できなかった結果だ」と判断できます。したがって,①「物事が適切に管理されていない状態」が正解となります。
 この問題は,entropy の辞書的な意味である「無秩序の度合い・均質化の低下」を問う知識問題ではありません。前文の内容を言い換えるダッシュの役割を理解し,entropy がマイナスのイメージを持つ語であると判断できれば,選択肢②と③はすぐに除外できます。ただ,④「従業員が好きなようにふるまう状態」はややカオス的な内容を含んでいるため,解答に迷う受験生もいたかもしれませんが,「注意したり,積極的に維持したりしない」を「従業員の好き勝手にふるまう」と解釈するのは無理があるので④は除外できます。
 このように,国公立大の2次試験は共通テストと比べて,かなり学術的な内容の英文が取り上げられ,単語帳には掲載されていないレベルの単語について出題されることも多いため,スキャニングやスキミングだけでは十分に対応できません。では,どのように学習すれば正解できるようになるのでしょうか。
 まずは単語の学習の仕方が大切です。難度順に掲載されている単語帳であれば,簡単な単語は見出し語のみ学習するのではなく,派生語や品詞などを意識して覚えることです。易しい単語を覚えることは必須ですが,それ自体の意味を問う問題はほぼ出題されません。出題される場合は,その派生語や一般的に知られていない品詞として出題されるからです。例えば “novel” は名詞で「小説」ですが,この意味が問われることはなく,形容詞の「新奇な」が問われます。また,難しい単語は派生語や品詞が問われることは稀なので,その見出し語をしっかり覚えれば十分です(先ほどの問題であれば coherence「一貫性」など)。
 これらの知識を土台として,次に文構造を考えた上で解釈することが重要です。20~30年前の入試では,相当複雑な構造の文章が出題されていましたが,近年ではそのような難解な文構造を持つ英文は出題されません。そのかわり,先ほどの名古屋市立大の問題にもあったような,ダッシュ(―),コロン(:),セミコロン(;)などの記号と機能語(however / moreover / therefore / for example など文の展開を教えてくれる語句)を意識する必要がある英文がよく出題されます。修飾語が何を修飾しているかを考え,抽象的な表現であれば自分の言葉で言い換えることで,正確に解釈できるようにしておきましょう。

 


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