メディカルラボ通信
2024年6月号『医学部を目指すための学習アドバイス~生物編~』
2024.6.28 公開
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もうすぐ7月。2024年ももう半分が過ぎました。
ここ最近は,猛暑日になったかと思うと,次の日は大雨だったり,
天候が安定しない日々が続いています。
体調を崩しやすい時期でもあるので,受験生も現役生も体調管理には気をつけましょう。
さて今回は,メディカルラボの生物担当講師の小川直秀先生に,24年度入試の傾向を踏まえ,
医学部を目指す上で必要な生物学習のポイントについてアドバイスをいただきました。
CONTENTS
2024年度入試の動向(大学入学共通テスト・私立医学部・国公立医学部)
大学入学共通テスト
21年度からスタートした大学入試共通テスト(以下,共通テスト)は,今回が4回目となりました。平均点を見てみると,21年度の1回目(第1日程)は72.64点と理科②の中で最も高かったのですが,22年度の2回目は48.81点と大きく低下し,3回目の23年度はさらに低下し,得点調整実施後で48.46点となり,理科②の中で最も低くなりました。得点調整が実施された翌年として注目された4回目の24年度は54.82点となり,23年度の得点調整実施後の得点から6.36点上昇しました。
1回目の共通テストでは,教科書に扱われていないような問題が多く扱われたため,問題文を読むだけで正答にたどりつけるような問題が多く見られました。その結果,平均点が近年にないほど高くなりました。しかし,2回目では思考力,判断力,表現力等を駆使して解くことが求められる問題を重視する傾向が極端に高まったため,解答に際して知識と複数のデータを組み合わせる問題が増加しました。それによって分量が増加し,平均点の大幅な低下につながったと考えられます。続く3回目では,さらに問題文が長くなり,図や表も増えたため,与えられた情報が多くなり,高度な読解力,思考力,分析力などを必要とする問題になりました。その結果,平均点は2回目よりさらに低下し,得点調整が実施されるに至りました。そして今回の4回目は,教科書の内容を中心とした比較的平易な知識問題が増加しました。また,実験の設定の読み取りが困難な問題や複雑なデータ処理を必要とする問題が減少し,さらに問題の分量も減少したため,受験生にとって全体的に取り組みやすい問題になりました。平均点は2回目と3回目よりも高くなりましたが,よく比較される物理よりもまだ約8点低くなっています。
4回目は取り組みやすくなりましたが,大学入試センターが発表している共通テスト問題作成の方針の『知識の理解の質を問う問題や,思考力,判断力,表現力等を発揮して解くことが求められる問題を重視する』ことを踏まえると,「知識や複数のデータを組み合わせる問題」をいかに素早く正確に攻略できるかがカギになると思われます。各社の共通テスト模試を受験したり,共通テスト用の問題集で演習したりすることで,決められた時間内に複数の情報を処理する能力を高めていくと良いでしょう。また,二次試験の練習も兼ねて,国公立大学の実験考察問題の演習をしていくのもオススメです。
私立医学部
24年度の私立医学部の入試について,現在判明している範囲では特に大きな変化は見られないようです。関西医科大学のようにかなり難度が上がった大学もあれば,23年度は異常に難しかった兵庫医科大学のように難度がかなり下がった大学もありました。
全体的には杏林大学や関西医科大学のように,実験考察問題で大きく差がつきそうな大学が増えた印象があります。新課程入試に向けた流れが出ているのかもしれません。今まで私立医学部ではあまり出題されていなかった感のある実験考察問題が苦手な受験生は十分な対策が必要です。
国公立医学部
24年度の国公立医学部の入試について,現在判明している範囲では,大阪大学や浜松医科大学のように全体的にやや難化している大学が増えている印象があります。その要因として,実験考察問題での実験の設定の読み取りに時間がかかる問題や複雑なデータ処理を必要とする問題が増加していることや,論述問題の総字数が長くなっていることなどが挙げられます。
また,東京大学の問題の分量に着目すると,23年度に30ページを超え,24年度は31ページになっていました。国公立大の入試問題は問題のページ数が多くなる傾向があります。市販の入試問題集では実際のページ数が分からないことが多いので,実際の入試問題を大学のホームページなどでダウンロードして,問題全体の雰囲気を掴んでおくとよいでしょう。
2024年度入試で出題された興味深い問題