メディカルラボ通信
2021年9月号『押さえるべき2022年度医学部入試の変更点』
2021.9.25 Updated
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ここ最近は朝晩もだいぶ涼しくなってきました。いろいろな食べ物が美味しくなってくる季節ですが,受験生の皆さんは毎日の食生活にも気を配るようにしましょう。集中力を高めるためには鉄分やミネラル,疲労回復にはビタミンB1など,栄養素を意識した食事が大切。また遅くまで勉強をしていると夜食を食べる機会もあるかと思いますが,お腹いっぱいになると眠気を生じやすいので,適量を意識して食べ過ぎないようにすることもポイントです。
さて,今回のメディカルラボ通信は「押さえるべき2022年度医学部入試の変更点」として,各大学が発表している変更点を押さえるとともに,実際の入試における影響などについてお伝えします。
さて,今回のメディカルラボ通信は「押さえるべき2022年度医学部入試の変更点」として,各大学が発表している変更点を押さえるとともに,実際の入試における影響などについてお伝えします。
CONTENTS
2022年度医学部入試の変更点とその影響
① 募集人員の変更
医学部の入学定員は,平成18(2006)年から令和3(2021)年にかけて,地域の医療確保の観点や,研究医養成のために増員を続けてきた結果,令和3年度の定員は9,357名に達しました(この数字には平成28年度に開設した東北医科薬科大学医学部(100名)と平成29年度に開設した国際医療福祉大学(140名)を含んでいます)。しかし,現在の定員をこのまま維持していくと,遅くとも2032年には医師の需給が均衡に達し,「医師過剰」状態になることが予測されています。そのため,将来的には抑制する方向で議論が進んでいます。2022年度入試の定員については,2020年春までに方向性が決まる予定でしたが,新型コロナウイルス感染症の影響で議論がストップしたことにより,一旦現状維持となることが決まっています。
とは言え,将来的な定員削減に向けて「一般選抜の定員を減らし,学校推薦型選抜や総合型選抜の定員を増やす」などの対応を始めている大学もあります。私立医学部では,例えば獨協医科大学の場合,全体の定員は105名を維持していますが,一般選抜で7名減,総合型選抜で3名減とし,その分学校推薦型選抜で10名増としています。産業医科大学も同様に一般選抜で5名減とし,その分を学校推薦型選抜の5名増に充てています。国公立医学部では,弘前大学が一般選抜〔前期〕で22名減,千葉大学が一般選抜〔前期〕で12名減,宮崎大学が一般選抜〔前期・後期〕で10名減など,大きく定員を減らしています。
定員が少なくなれば,相対的に志願倍率が上がります。したがって,合格可能性を高めるためには志望校選びにおいても「出願要件を満たしているならば,一般選抜だけでなく学校推薦型選抜も受験してみる」,「地域枠も視野に入れて考える」などの対応が必要となるわけです。
② 地域枠の新設・定員増
①で医学部の定員は将来的に抑制する方向で進んでいるとお伝えしましたが,全体としての人数は減らしつつも,地域枠については新設や増員が認められることになっています。
その背景にあるのが「医師数の地域格差」です。厚生労働省は2019年に医師偏在の度合いを示す指標として「医師偏在指標」(参考:厚生労働省Webサイト)を発表しました(詳細な計算式は下記注釈を参照)。これによると,最高値の東京都は329.0だったのに対し,最低値の岩手県は169.3とおよそ2倍の格差が生じています。また,さらに細かい地域別で見ると,最高値は東京都区中央部で759.7,最低値は秋田県北秋田で69.6と10倍以上の格差が生じており,居住地域によって充分な医療が受けられるかどうかが決まるという状況になっています。
この状況を少しでも改善するため,医師不足の自治体は各大学に働きかけ,地域枠の新設や増員に尽力しています。ここ最近では新潟県の動きが活発で,2022年度入試では杏林大学,東京医科大学,東邦大学に地域枠が新設され,昭和大学では定員が5名増員されています。新潟県と同様に医師不足に悩んでいる岩手県や茨城県,静岡県についても岩手医科大学や順天堂大学,近畿大学などで新設や増員になります。一般的に,地域枠は本人の居住地域や出身高校などに制限がある場合が多いのですが,先に紹介した新潟県地域枠では出身地や出身高校に制限がないため,全国どこからでも受験可能です。もちろん,「なぜその地域枠を志望するのか」という質問に対して,明確に回答できるようにしておく必要はありますが,医師免許取得後の勤務地の制約などに問題がなければ,受験校の候補として検討してみても良いのではないでしょうか。
※医師偏在指標=標準化医師数/地域の人口÷10万×地域の標準化受療率比
※標準化医師数=Σ性年齢階級別医師数×(性年齢階級別平均労働時間/全医師の平均労働時間)
※地域の標準化受療率比=地域の期待受療率÷全国の期待受療率
※地域の期待受療率=Σ(全国の性年齢階級別受療率×地域の性年齢階級別人口)/地域の人口